「経営計画」と聞くと、「なんだか難しそう」と苦手意識を持つ社長もいらっしゃるのではないでしょうか。経営計画は、社長が「来期やりたいこと」を数字に落とし込んだものです。まずは、社長の「来期やりたいこと」を思いつくままに挙げてみましょう。それが経営計画をつくる第一歩です。
その上で、「来期やりたいこと」を実現するためには、どれくらいの資金が必要になるかを会計事務所と一緒にシミュレーションしてみましょう。そのシミュレーションの元になるのが、①目標経常利益②売上高の伸び③限界利益率(粗利益率)④従業員給与・賞与の伸び⑤従業員数――の「5つの質問」です。「来期やりたいこと」を盛り込んだ、具体的な数字で考えてみると、取り組むべき課題が明確になってきます。
来期に向けて、経営計画、つくってみませんか。
パート・アルバイトで働く人の中には、自身の年収と配偶者の扶養の範囲を意識している人も少なくありません。税金や社会保険の扶養の範囲に影響のある年収のライン、いわゆる「年収の壁」について、従業員に説明しておきましょう。
【所得税・住民税】
○100万円の壁 ▶ 住民税が課税
○103万円の壁 ▶ 所得税が課税
○150万円の壁・201万円の壁 ▶ 配偶者特別控除の額が段階的に縮小→0に
年収103万円以下であっても、給与所得以外に副業等の収入があると、一定の場合、一時所得や雑所得、譲渡所得となって、所得税が課税される「103万円の壁」等を超えてしまうことがあるので注意が必要です。
【社会保険】
○106万円の壁 ▶ 社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用
○130万円の壁 ▶ 社会保険(国民年金・国民健康保険)の適用
政府は現在、「年収の壁」を意識せずに働ける環境整備に力を入れています。これからは、扶養の範囲内で働くよりも、世帯収入を増やす働き方を提案しても良いかもしれません。
経済・社会のデジタル化に伴い急速に増えているのが、「デジタル資産」です。写真・動画などのデジタルデータもデジタル資産に該当しますが、中でも注意して管理することが必要なのは、ネット銀行・ネット証券口座の残高、サブスクリプションサービスの利用料金、FX(外国為替証拠金取引)、暗号資産などの、金銭的価値のあるデジタル資産です。
デジタル資産は管理に必要な情報が運用者(本人)に集中しやすく、他人がその存在や内容を把握することは容易ではありません。また、FXや暗号資産取引など、金額の大きなデジタル資産は、税金の申告漏れ等の税務トラブルに発展することもあります。
デジタル資産の早期・適切な管理は、家族等の負担を減らすだけでなく、トラブルに巻き込まれるリスクを減らすことにもつながります。今のうちから、①デジタル資産の内容をリストアップする②信頼できる存在に共有しておく――といった対策をとると良いでしょう。
インボイス制度導入から1年が経過しました。インボイス発行事業者間の取引については、実務上の混乱は少なくなってきましたが、注意が必要なのは免税事業者等との取引です。免税事業者等からの仕入れに係る原則や経過措置を受けるための要件等を再確認しましょう。
□原則:買手は仕入税額控除ができない
□経過措置:令和11年9月30日までは一定割合の仕入税額控除が可能
この経過措置の適用を受けるためには、次のことが必要です。
①請求書・領収書等に消費税込みの請求金額・領収金額
(「区分記載請求書等保存方式」の記載事項)が記載されていること
②帳簿に「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載
記載要件が満たされている請求書等であるかどうか、まずはきちんと確認することをあらためて徹底しましょう。
生前贈与により財産をもらったときは、原則として贈与税の納税義務が生じます。その課税方法には暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つがあります。
暦年課税制度は、1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残額(基礎控除後の課税価格)に、所定の税率(10%~55%)をかけて贈与税額を計算します。同制度の利用には特段の要件・制限等はありません。
相続時精算課税制度は、1年間に贈与された財産の合計額を基に、一定の税率(20%)で贈与税を計算して「仮払い」し、相続発生後、贈与された財産を相続財産に加算した上で、相続税額から「仮払い」した贈与税の分を差し引く(精算する)制度です。同制度の利用には一定の要件等があり、同制度を選択した贈与については、暦年課税制度に戻すことができません。
財産の状況や家族構成、贈与期間等により、どちらの制度が有利であるかの判断は非常に難しく、慎重な検討が必要です。生前贈与をお考えの方は、早めに当事務所までご相談ください。
政府は働き方改革の一環として副業・兼業(以下、副業)の普及を図るという方向性を示しています。企業にとっても、従業員が副業を行うことにより「社内では得られない知識・スキルを獲得できる」「社外から新たな知識・情報や人脈を得ることで事業機会の拡大につながる」等の効果が期待される一方で、①過剰労働や本業に専念できない②業務上の秘密やノウハウが漏洩する③競業により自社の利益が害される④労務管理等が煩雑になる――などのリスクが挙げられます。
副業自体への法的な規制はありませんが、裁判例では、企業の利益や信頼を損なうおそれがあるときは、副業の禁止や制限することを認めています。したがって、就業規則に「原則として、従業員は副業を行うことができる」とした上で、例外的に副業を禁止、制限する場合の規定を設けるといった対応をすると良いでしょう。就業規則に副業のルールを規定しておかないと、知らないうちに従業員が副業をしていても止めさせることができないおそれがあります。
就業規則がない中小企業も見受けられます。「副業をしたい」と従業員から申し出があったときに備えて、副業のルールを含めて、就業規則の整備を検討してはいかがでしょうか。
決算書や試算表を見ていて、「表示されている勘定科目の中身をもっと細かく、リアルタイムで確認したい」と思ったことはありませんか。
インボイス制度の導入によって、正確な会計処理を行う上で必要不可欠となったのが、自計化システムの導入と、取引先およびそのインボイス番号の管理です。同制度導入を機に定着した取引先別管理を、会計処理だけでなく経営分析にも活かしてみましょう。
主要勘定科目等(売掛金、買掛金、売上高、売上原価、経費科目等)について取引先別管理を行うと、自社の取引状況や債権・債務の取引先別の残高確認が容易にでき、経営課題や売上・利益アップのヒントをいち早く見つけられるようになります。
また、売掛金と売上高の取引先別管理に加えて、FXクラウドシリーズの「得意先順位月報」を活用すると、取引先別の詳細な分析ができるようになります。
夏から秋にかけては台風シーズン。風水害や地震等により法人の資産が被害を受けたときの損害額や復旧費用、被災した従業員や取引先を支援したときの支出等の多くは、当期の費用や損失として損金とすることができます。災害時によくあるケースを確認してみましょう。
〇ケース1:被災した自社の従業員等へ災害見舞金品を支給した
〇ケース2:取引先等へ災害見舞金等を贈った
〇ケース3:被災地に自社製品等を贈った
〇ケース4:取引先等へ事業用資産を供与した
〇ケース5:取引先の売掛金等を免除した
ただし、被災した取引先等への支援であっても、場合によっては寄附金や交際費等に該当するものもあります。災害時の税務上の取扱いについて判断に迷われた際は、当事務所までご相談ください。
発注事業者(業務を委託する事業者)とフリーランス事業者(業務を受託する事業者)との取引の適正化等を目的とした「フリーランス法」が11月1日に施行されます。この法律は、原則として事業者間(BtoB)における委託取引が対象で、フリーランス事業者に対して、発注事業者が果たすべき最大「7つの義務項目」を定めています。具体的な義務項目は次のとおりです。
①書面等による取引条件の明示
②報酬支払期日の設定・期日内の支払
③禁止行為
④募集情報の的確表示
⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮
⑥ハラスメント対策に係る体制整備
⑦中途解除等の事前予告・理由開示
発注事業者が満たす要件によって、遵守すべき義務項目は異なります。また、もしも義務項目に違反した場合には、罰則が科されることとなっています。施行日までに、必要に応じて業務フローや委託内容等を見直し、スムーズな取引に向けて準備を進めておきましょう。
会社の通常の事業とは関連しない「営業外収益」のうち、少額なものや、たまたまの取引で得た収益は、実務上「雑収入」として計上します。
例えば、不動産等の賃貸収入、保険会社からの契約者配当金、使用しなくなった車両・機械装置等の売却代金、自動販売機による収入、鉄くず・建設廃材等の売却代金、消費税の納付差益・精算差益、代理店手数料――等が雑収入に該当します。
雑収入は、通知があった時や債権が確定した日に収益計上すべき取引であり、税務調査でも期ずれを指摘されがちです。たとえ少額であっても漏らすことなく、正しく計上しましょう。
雑収入の判断や取扱いについて迷われた際は、ぜひ当事務所までご確認ください。
1年間の経営成績を表す損益計算書に対して、過去から現在に至るまでの経営努力の結果を示しているのが、貸借対照表です。財産や債務の内容、利益や損失の過去からの蓄積が表れている貸借対照表の「磨き上げ」をして、今から将来に備えておきましょう。
経営者が最高経営責任者として経営を担った後は、「次世代に事業承継する」「M&Aにより会社を譲渡する」「廃業する」等を選択することになります。ところが、金融機関からの借入金が多額であったり、貸借対照表が実態を表していなかったりした場合には、いずれの選択肢を選んだとしてもスムーズに進まない可能性があります。そのため、今のうちから貸借対照表の「磨き上げ」が必要なのです。自社の貸借対照表を、①不良債権②不良在庫③貸付金・仮払金等④投資等⑤借入金⑥隠れ債務(連帯保証を含む)の有無⑦自己資本――の観点からチェックしてみましょう。
「年収の壁(106万円)」などで話題に上ることが多い社会保険(厚生年金保険・健康保険)。政府はいま、「多くの人に手厚い社会保障を」との方針のもと、社会保険適用拡大の制度改正を進めています。令和6年10月から「従業員数51人以上」の会社が義務的適用となり(現行は「従業員数101人以上」の会社が義務的適用)、次の基準をすべて満たすパート・アルバイトの方が、社会保険の新たな加入対象者となります。
①週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
②所定内賃金が月額8.8万円以上
③2か月を超える雇用の見込みがある
④学生ではない(休学中、定時制・通信制の方を除く)
なお、従業員数をカウントする際は、店舗や工場等の複数の拠点を持つ会社では、全拠点の従業員数を合算する必要があることに注意しましょう。
新たに社会保険に加入した従業員の手取りが減らないよう、手当を支給するなど収入を増加させた場合は、「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」の活用が可能です(令和8年3月31日までの措置)。
融資審査にあたり、金融機関が重視するのは、主に①貸したお金は何に使われるのか?(資金使途)②貸したお金はきちんと返済されるのか?(返済能力)――の2つです。
金融機関からすれば、「将来、返済するためのお金(返済原資)」を生むものでなければ、融資は難しくなります。そこで融資の申し込みにあたっては、「借りたお金は何に使うのか」「融資実行後、どのくらい利益が生まれるのか」「その利益からいくら返済していくのか」を、社長自身の言葉で説明できるように準備しておきましょう。これらの説明が明確で、かつ具体的であればあるほど、金融機関は融資実行を判断しやすくなります。
また、年1回の決算書に加え、「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」を通じて、定期的に試算表も金融機関に提出するようにしましょう。積極的・定期的な情報開示は、金融機関との信頼関係をより深める「第一歩」です。
「修繕費」とは、社屋や工場の外壁塗装、機械や車両のメンテナンスなど、会社が保有する固定資産の通常の維持管理と原状回復にかかる支出を指します。修繕費は、当期の費用として計上することができます。
修繕費と迷う支出に、「資本的支出」があります。新たな機能の物理的な付加や品質・性能の向上によって、固定資産の価値や耐久性をアップさせるような修理・改良を行った場合の支出が該当します。この場合には固定資産として計上し、法定耐用年数の期間中、減価償却費(費用)として計上しなければなりません。
なお、税務調査では実際に修理を行った箇所を確認することがよくあります。修理箇所の作業前後の写真や、修理内容がわかる資料を保存しておくと良いでしょう。
修繕費か、資本的支出か。判断に迷ったら、ぜひ当事務所までご相談ください。
残業手当は、会社が定めた「所定労働時間」を超えて労働させた場合に従業員に支給する賃金のことで、時間外労働手当とも呼ばれます。「法定労働時間(1日8時間、1週40時間)」を超えて労働した従業員に対して、会社は割増賃金を支払わなければなりません。また、深夜や休日の労働には、別途割増賃金を支給する必要が生じます。
残業手当が支払われないと、従業員の離職につながるだけでなく、訴訟に発展してしまうおそれもあります。「労働の対価」という考え方のもと、適切に支給しましょう。
また、「なぜ残業が生じているのか」をあらためて考える機会をつくることも必要です。働き方改革が進み、ワークライフバランスが重視される昨今。残業時間の削減は、従業員の満足度向上や定着、採用の強化などにつながります。デジタル活用による「残業ありきの働き方」の見直しもあわせて進めましょう。
令和6年6月から「定額減税」が始まります。所得税の定額減税は、原則として、年末調整時の「一括控除」が認められておらず、月次での対応が必要になります。6月以降の給与計算事務をスムーズかつ適切に実施できるよう、次のことを準備しておきましょう。
(1)控除対象者の確認と減税額の確定
〇給与計算担当者は「令和6年6月1日」時点で、自社の従業員のうち「誰が」「いくら」減税となるのか──を確定する必要があります。
(2)「各人別控除事績簿」の作成
〇各従業員の減税額が確定したら、氏名、扶養親族等の人数、合計の減税額を記載した一覧表「各人別控除事績簿」を作成しておきましょう。
(3)給与等の明細書の様式の見直し
〇定額減税がスタートすると、各従業員の給与等の明細書に、当該給与等の所得税から控除した額を記載する必要があります。事前に明細書の様式を見直しておきましょう。
令和6年度税制改正で、法人税において交際費等から除外される1人あたりの飲食費の基準が5千円以下から1万円以下に引き上げられました。とは言え、会社のお金を安易に使うのは考えものです。
そもそも「交際費等」とは、得意先や仕入先等、会社の事業に関係のある人に対して、接待や贈答、慰安等を行うために支出する費用。会社の売上や利益の維持・増加、円滑な取引の継続等のために支出するものです。
そのため、交際費等が使われている実態が、個人的な友人とのゴルフや家族との飲食のような、役員の私的な支出であれば、役員への給与とみなされ源泉所得税が課されることになります。また、会社では損金算入が認められず、法人税等の課税額の増加につながることも。
「経費になるから」と公私混同はせず、適切な支出を心がけましょう。
現在、国税庁は「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」を目指して、税務手続のデジタル化を推進しています。中小企業等にとっては、以下のような点で利便性が向上しています。
(1)キャッシュレスで「行かない」納付
〇e-Taxを利用したダイレクト納付、インターネットバンキングなどを利用すれば、窓口に行く手間や現金管理の事務負担を削減できます。
(2)年末調整の簡略化
〇「マイナポータル」や給与計算ソフトを活用すれば、煩雑な年末調整の手続きもスムーズに進みます。
(3)個人の確定申告は「書かない」時代に
〇e-Taxや「マイナポータル」の機能拡充に伴い、給与等の収入金額や医療費の支払額などのデータも自動的に取り込み、入力なしで確定申告を行うことができます。
税務手続のデジタル化は、従業員の対応を含め準備が必要になります。当事務所と一緒にデジタル化を進めましょう。
「値決めは経営」と言われるほど、経営において重要な位置を占める価格設定。資源価格や原材料価格の高騰を受け、製品・サービス等のコストは上昇傾向にあります。また、賃上げ機運の高まりもあり、人件費の増加も見込まれます。適正な利益を確保し、日頃、頑張ってくれている従業員に報いるためにも、適切な「値決め」がますます重要になっています。
次の3つのポイントを踏まえ、自社の値決めの方針についてあらためて考えてみましょう。
(1)コストと利益を踏まえて価格を見直す
(2)自社の「強み」を見つめ直す
(3)値上げ等の交渉ではその根拠となる具体的なデータを提示する
企業の賃上げを応援する税制として設けられた「賃上げ促進税制」。従業員に対する給与等の支給額(雇用者給与等支給額)を前年度よりも一定割合増加させた場合に、賃上げ額の一部を法人税から控除できる制度です。
令和6年度税制改正により、適用期限が3年延長され、最大控除率もアップ。加えて中小企業については、赤字であった、もしくは大きな黒字ではなかったために税額控除をしきれなかった場合に、最長5年間、未控除額を繰り越せるようになりました。
同税制の適用を受ける前に、次のことを確認しておきましょう。
(1)ベースとなる前年度の雇用者給与等支給額を把握する
(2)直近の経営状況を踏まえ、①どの程度の賃上げが可能か②その際、何%の税額控除を受けられるか――を確認する
(3)賃上げの原資となる利益(限界利益)を確保する方法を検討する
5月から6月にかけては、季節の変わり目とも相まって、メンタルヘルスの不調を訴える人が多くなるシーズンです。1人ひとりの従業員に本来の力を発揮してもらうには、企業におけるメンタル面での健康を守る取り組み(メンタルヘルスケア)が大切です。
メンタルヘルスケアとは、すべての働く人が健やかに、いきいきと働けるような気配りと援助をすることと、その活動が円滑に実践される仕組みづくりのことをいいます。
メンタルヘルスケアの第一歩は、従業員自身にメンタル面のセルフケアに取り組んでもらうことです。従業員がメンタルヘルスの変化に気づき、セルフケアに取り組むきっかけの1つとして「ストレスチェック」があります。積極的な活用を検討しましょう。
また、メンタルヘルスの異変を自覚した従業員をケアできるよう、①専門家を活用する②相談しやすい環境を整える――など、社内の体制づくりも大切になります。
令和6年度税制改正により、6月から納税者(合計所得金額1,805万円以下の給与所得者と個人事業主等)と、その配偶者を含む扶養親族1人につき4万円(所得税3万円・住民税1万円)の定額減税が行われます。
所得税については、6月1日以後最初の給与等の源泉徴収される所得税から減税額を控除。控除しきれない場合は、減税額に到達するまでそれ以後の給与等の支給時に順次控除する仕組みのため、給与計算の担当者は注意が必要です。
給与計算担当者は、従業員から提出された「扶養控除等申告書」「源泉徴収に係る申告書」を基に、減税額の計算対象となる配偶者や扶養親族を正しく把握する必要があります。これらの申告書から把握できない配偶者等については、年末調整で調整します。
令和2年から行われている中小企業の時間外労働(残業)の上限規制。令和6年4月1日から建設業・自動車運転の業務・医師に対する猶予が終了し、「残業」への社会の見方がより厳しくなると予想されます。これを機に自社の残業の状況を再確認し、適切な労務管理に努めましょう。
そもそも労働時間は、①所定労働時間②法定内残業時間③法定外残業時間――の3種類に分けられます。このうち③法定外残業時間は、原則として「月45時間、年360時間以内」に抑えなければなりません。残業を減らすための取り組みとしては、次のようなものが挙げられます。
○残業の事前承認制の導入
○変形労働時間制の採用
○事業・製品・商品構成の見直し
○新たな技術の積極的な導入
相続によって取得した不動産(土地・建物)の登記(相続登記)がされないまま相続が繰り返され、登記簿上の所有者がわからない「所有者不明土地」が全国で増加しています。その発生予防の一助として、令和6年4月1日から、相続した不動産について不動産登記簿の名義を変更する「相続登記」が義務化されます。
(1)相続人は、不動産を相続(遺言を含む)で取得したことを知った日から3年以内に、法務局に登記の申請をしなければなりません。
(2)令和6年4月1日より前に相続した不動産についても、未登記であれば、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。
(3)「正当な理由」がないにもかかわらず、相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。
なお、相続登記の期限までに遺産分割をまとめることが困難なときは、令和6年4月1日から新たにスタートする「相続人申告登記」という手続きを活用すると良いでしょう。
3月は企業の決算が集中する月です。決算を迎える企業は、決算日までに次のような点を確認しておきましょう。
○請求を再確認する:売掛金の計上漏れがないか、納品書控・得意先元帳・売掛金台帳等の記録を確認する。
○滞留・不良債権への対応を検討する:滞留・不良債権化している売掛金等は、貸倒損失や貸倒引当金を計上できる条件を満たしているかどうかチェックする。
○不良在庫は決算日までに処分する:セール等による値引販売や廃棄処理、買取業者への依頼等によって処分することを検討する。
○固定資産を確認する:①実際に事業用として稼働しているか②少額減価償却資産の特例が適用できるか③その固定資産の修理は修繕費か――を確認する。
○仮払金等を精算する:残高がある場合、精算して適切な勘定科目に振り替える。
手元により多くのキャッシュ(現金・預金)を残すことを重視する経営を「キャッシュ・フロー経営」といいます。資金の入りを「多く・早く」、資金の出を「少なく・遅く」することがポイントです。自社の仕入から販売、支払い、回収までのサイクルを次の指標で確認することが重要です。
○棚卸資産回転期間(日)=棚卸資産÷純売上高×365
※原材料・商品を仕入れてから販売するまでの期間。
○売上債権回転期間(日)=売上債権÷純売上高×365
※製品・商品を販売してから代金を回収するまでの期間。
○買入債務(支払基準)回転期間(日)=買入債務÷仕入代金支払高×365
※原材料・商品を仕入れてから代金を支払うまでの期間。
○必要運転資金回転期間(日)=(棚卸資産回転期間+売上債権回転期間)-買入債務回転期間
※仕入代金を支払ってから販売した代金を回収するまでの期間。
「必要運転資金回転期間」は、資金調達が必要な期間です。この期間を短くすることで資金の心配が減り、安心の経営につながります。
新たな従業員の雇用や、有期雇用の従業員との契約更新の際に義務付けられている「労働条件の明示」。そのルールが、令和6年4月1日から変わります。令和6年4月1日以降、新たに書面で明示すべき事項は次の通りです。改正点の確認とともに、自社の労働条件およびその明示の方法を見直してみましょう。
(1)すべての従業員に対する明示事項:就業場所・業務の変更の範囲
(2)有期雇用の従業員に対する明示事項:
①有期労働契約の更新の上限
②無期転換申込機会
③無期転換後の労働条件
商売繁盛の「カナメ(要)」となるのが、「日々の記帳(毎日、会社で会計データ〈仕訳〉を入力すること)」と、年12回の「月次決算」です。
日々の記帳は、①自社を守るための証拠づくり②経営者自身への報告(自己報告)── という2つの側面があります。日々の記帳が習慣になっているか否かで、お金の使い方や行動にも大きな差が出てきます。日々の記帳を良い習慣としてしっかり根付かせましょう。
月次決算とは、「経営者自身が、毎月の業績を翌月早々に把握でき、かつ、活用できる状態」を指します。そのためには、発生主義で正しく月次決算を行い、前月の取引にかかった費用/得た収益を正確に把握することが何よりも重要になります。
これらの前提は、①正確な日々の記帳をサポートする法令に準拠した会計システムを活用すること②会計事務所のチェック・助言を毎月受けること(月次巡回監査)── です。
一緒に商売繁盛を目指しましょう。
会社の経営にとってキャッシュ(現金・預金)は、人間の体でいう血液に相当します。人が貧血になれば倒れてしまうように、会社のキャッシュが少なくなれば企業活動は停滞し、倒産という事態にもなりかねません。会社のキャッシュを増やすことは、経営を安定させ、将来への投資を自己資金で行えるなど経営の自由度が増すことにもつながります。
「キャッシュがきちんと生み出されているか」は、キャッシュ・フロー計算書で確認しましょう。「Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー」「Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー」「Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー」の3つに分類され、それぞれの活動でキャッシュがどれだけ増減し、最終的にどれだけ残ったのかが表示されます。
自社のキャッシュ・フロー計算書を見ながら、あらためて最近の経営状況を思い返し、今期、来期の資金計画に活かしてみましょう。
個人事業者の消費税や所得税の確定申告の時期になりました。免税事業者からインボイス発行事業者となった個人事業者は、今年から消費税の確定申告・納税も必要になります。その際、免税・課税事業者の期間を区分することが重要です。業種にかかわらず売上税額の一律2割を納税額とする特例措置(2割特例)を適用することも検討しましょう。
所得税の確定申告で注意しなければならないのは、家事費と家事関連費です。家事費は業務に関係のない生活(プライベート)のための支出で、必要経費として認められません。したがって、仕入代金・広告宣伝費・従業員給与など、業務上の必要経費と家事費とはしっかり区分しておく必要があります。
家事関連費は、必要経費と家事費が混在した支出です。例えば、店舗併用住宅の水道光熱費や家賃、火災保険料、業務と生活において利用する自動車の諸費用等が該当します。家事関連費については、使用時間や使用頻度などの合理的な方法によって按分し、業務上必要な部分を明確にすることで、その部分が必要経費として認められます。
「経常利益」は、限界利益から固定費を引いた残りで、経営の総合的な成果、いわば社長の「最終成績」ともいえる数字です。経常利益がマイナスであれば、慢性的な資金不足を引き起こしかねません。また、たとえ経常利益がプラスでも、自己資本の蓄積が少ない場合は、借入金を返済するための元本等となるため、キャッシュとして残るまでには至りません。法人税等の納税資金を準備する必要もあります。こうしたことから、安定した経営を継続するために、毎期、黒字化を目指していくことは非常に大事です。
黒字決算を実現するには、「PDCAサイクル」と呼ばれる業績管理の実践が必要になります。それは、期首に立てた計画(Plan)に沿って行動計画を実行(Do)し、計画と実績の差異を検証(Check)し、課題や変化への対策を考え実践(Action)すること――です。
PDCAサイクルの前提となるのが、正確な月次決算です。月次決算を行って変動損益計算書を確認していると、早期に課題を発見し、打ち手を検討することが可能になります。
インボイス制度の開始後、PDFをはじめとした電子データによる「電子インボイス」を受け取っている会社も多いことでしょう。電子インボイスの一種で、世界各国はもちろん、日本でも現在導入が進んでいる「ペポルインボイス」。その主な特徴は次のとおりです。
〇送信/受信側が同じシステムを利用していなくてもデータのやりとりが可能
〇発行者名・品名・取引金額等のインボイスの記載事項について、受信したシステムでその内容を正確に読み込めるため、請求書の確認・仕訳入力が楽になる
ペポルインボイスの送受信には、「ペポルサービスプロバイダー」に認定されている企業と契約を結ぶ必要があります。その点、TKCは、「ペポルサービスプロバイダー」に国内で初となるタイミングで認定されています。また、TKCのFXシリーズ・SXシリーズを利用している場合には、標準機能でペポルインボイスの送受信が可能です(送信機能は今後順次搭載予定)。
ペポルインボイスの利用を検討されている場合は、当事務所にご相談ください。
2024年には、会社の経営に関わるさまざまな制度改正が予定されています。例えば、次のような制度改正があります。
①電子取引データの電子保存の本格義務化(1月1日~)
②暦年課税制度・相続時精算課税制度の見直し(1月1日~)
③建設業・自動車運転の業務・医師の残業規制開始(4月1日~)
④相続登記の義務化(4月1日~)
⑤フリーランス保護新法施行(秋ごろまでに施行予定)
⑥社会保険の適用拡大(10月1日~)
自社で対応が必要となるものを事前に把握し、準備を進めておきましょう。